神戸地方裁判所 昭和27年(ワ)11号・昭28年(ワ)493号・昭27年(ワ)524号 判決
原告 陳文効 (外三名)
被告 渡辺輝一 外五名
一、主 文
原告陳尚飛、陳尚華の各訴を却下する。
被告渡辺輝一は原告陳文効、陳徳発に対して神戸市須磨区須磨浦通五丁目一九番地上木造瓦葺二階建居宅一棟建坪三八坪四合二階坪二六坪六合の内西側の一戸を明渡し且つ昭和二七年一月一日以降右家屋明渡済迄一ケ月金五四〇円の割合による金員を支払え。
原告陳文効、陳徳発のその余の請求を棄却する。
訴訟費用中主文第一項の各訴について生じた分は原告陳文効の負担とし、原告陳文効、陳徳発と被告渡辺輝一との間に生じた分は同被告の負担とし、その余は原告陳文効、陳徳発の負担とする。
本判決は主文第二項に限り原告陳文効、陳徳発において各金三〇〇、〇〇〇円宛の担保を供するときは仮に執行することができる。
二、事 実
原告陳文効は被告等は原告に対し神戸市須磨区須磨浦通五丁目一九番地上木造瓦葺二階建居宅一棟建坪二八坪四合、二階坪二六坪六合の内西側の一戸を明渡せ、被告渡辺輝一は原告に対し昭和二七年一月一日以降右家屋明渡済迄一ケ月金五四〇円の割合による金員を支払え、訴訟費用は被告等の負担とするとの判決と仮執行の宣言を求め、原告陳徳発は被告田中常三を除いたその他の被告等は原告に対し前記家屋を明渡せ、その他は原告陳文効と同趣旨の判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、原告等四名は昭和二三年四月藤田義太郎より本件家屋を買受け、同年同月三〇日代金を完済し、翌五月一日その所有権取得登記を経由した。ところが買受当時から被告渡辺輝一、同武が本件家屋を賃借して居住していたので、右被告両名と原告陳文効、陳徳発が藤田義太郎外二名を加えて協議した結果、右被告両名は同年五月一日限り本件家屋を明渡すこと、右原告両名は明渡を受けると同時に移転料として金一〇、〇〇〇円を被告両名に贈与することを内容とする明渡の合意が成立したので、原告両名は右約旨に基き約定の日に金一〇、〇〇〇円を提供して本件家屋の明渡を求めたが、被告両名はこれを拒絶したので、本件家屋の賃貸借は同日限り終了した。よつて、右被告両名は本件家屋を明渡す義務があるのにこれを怠り、爾後原告等に対して一ケ月金五四〇円の割合による賃料相当額の損害を蒙らせつつある。そうして被告田中常三は昭和二三年八月末頃から被告石川宇三郎、呉啓三郎、多田隆一はいずれも同二五年一月初頃より被告渡辺両名と共同して本件家屋を占拠し原告等の所有権を妨害しているから、原告陳文効は被告等に対し原告陳徳発は被告田中常三を除いた被告等に対し本件家屋の明渡と、被告渡辺輝一に対しては前記損害の中昭和二七年一月一日以降右家屋明渡済にいたる迄一ケ月金五四〇円の割合による損害金の支払を求める。
仮に前記被告渡辺両名との間の特約の事実が認められないとしても、原告陳徳発は昭和二八年五月二二日同年(ワ)第四九三号事件の訴の提起により被告渡辺両名に対して同被告等が本件家屋をその他の被告等に前記のように転貸したから右を理由として本件家屋の賃貸借を解除する旨の意思表示をなし、右訴状は同年六月二五日被告両名に送達されたから右賃貸借は同日限り解除となつた。よつて、原告陳文効、同陳徳発は被告渡辺輝一に対して昭和二七年一月一日より同二八年六月二五日まで一ケ月金五四〇円の割合による本件家屋の延滞賃料と同年六月二六日より右家屋明渡済迄前記賃料相当額の損害金の支払を予備的に請求すると述べた。
原告陳尚飛、陳尚華両名の訴訟代理人として弁護士赤松清亮が提起した昭和二八年(ワ)第四九三号事件の訴状によると、同原告等は前記原告陳徳発主張の請求原因と同一の事実に基き被告田中常三を除いた被告等に対し本件家屋の明渡と被告渡辺輝一、渡辺武に対しては昭和二三年五月一日以降、被告石川宇三郎、呉啓三郎、多田隆一に対しては同二五年二月一日以降右家屋明渡済迄一ケ月金五四〇円の割合による金員の支払を求めるというにあると述べた。<立証省略>
昭和二七年(ワ)第一一号、同年(ワ)第五二四号の各事件の被告等訴訟代理人は、原告陳文効の請求を棄却するとの判決を求め、答弁として、同原告主張事実中原告等四名の為に昭和二三年五月一日本件家屋の所有権取得登記のあること、被告渡辺輝一、渡辺武が本件家屋に居住していること、被告田中常三は昭和二二年中八ケ月間本件家屋二階一〇畳の間に、被告呉啓三郎、石川宇三郎はいずれも同二六年一二月前者は階下八畳の間に後者は二階一〇畳の間に、被告多田隆一は同二七年中三、四ケ月間本件家屋の一部に各居住していたことは認めるが、その余の事実は否認する。前記同居していた被告田中常三外三名はいずれも被告渡辺両名の縁故関係のものであつて住居に困窮していたので本件家屋に雑居することになつたが、被告渡辺輝一の占有下に居住していたものであるから転貸と称すべきものではなく、しかも現在は皆他に転居して本件家屋には居住していない。また本件家屋の家賃も昭和二五年九月一日より同二六年八月末日迄一ケ月金一〇〇円の割合で被告渡辺輝一において弁済供託している。したがつて原告の請求には応じられないと述べた。
昭和二八年(ワ)第四九三号事件の被告渡辺輝一、渡辺武、多田隆一の訴訟代理人は、本案前の答弁として、原告陳徳発の訴を却下する、訴訟費用は右原告の負担とするとの判決を求め、その理由として、原告陳徳発の訴は共有物に属する権利を主張するものであるから、共有者全員が共同してのみ訴訟を追行し得べき場合であるのにその一部の者と共同して提訴したものであるから不適法である。仮にそうでないとしても、右訴は昭和二十七年(ワ)第一一号事件と被告並びに訴訟物を同一とするから民事訴訟法第二二一条の二重訴訟禁止の規定に該当するから不適法であると述べ、次に本案につき原告陳徳発の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、請求原因に対する答弁として昭和二七年(ワ)第一一号及び同年(ワ)第五二四号事件の同被告等の答弁と同一の事実を述べた。
昭和二八年(ワ)第四九三号事件の被告呉啓三郎、石川宇三郎は適式の呼出を受けながら同事件の口頭弁論期日に出頭しないし答弁書その他の準備書面を提出しなかつたが、前記昭和二七年(ワ)第五二四号事件の原告陳文効の請求に対する右両被告等の答弁と同一の事実を主張して争う意思があるものと認められる。
昭和二八年(ワ)第四九三号事件の被告渡辺輝一、渡辺武、多田隆一は原告陳尚飛、陳尚華の訴に対して、本案前の答弁として右原告両名はその肩書住居に居住せず所在を調査するも判明しない結果日本に居住するや否や不明で、その訴訟代理人赤松清亮は適法な訴訟委任を受けたものと考えられないからその訴は不適法である。仮にそうでないとしても原告陳徳発の訴に対する本案前の抗弁として主張したと同一の主張に基き右原告両名の訴を却下する。訴訟費用は右原告等の負担とする判決を求め、請求原因に対する答弁として右原告等の主張事実を経て否認し、その請求を棄却する訴訟費用は右原告等の負担とするとの判決を求める旨記載した答弁書を提出した。<立証省略>
三、理 由
一、先づ原告陳尚飛、陳尚華の訴訟代理人として弁護士赤松清亮の提起した訴につきその適否を判断することとしよう。
被告渡辺輝一、渡辺武、多田隆一は右訴は適法な訴訟委任なくして提訴された不適法な訴である旨争うから先づこの点について考えて見るに、同弁護士は昭和二八年七月二〇日の本件口頭弁論期日において当裁判所よりその委任状につき公証人の認証を受くべき旨命ぜられたに拘らず公証人の認証を得られずして同年九月一二日当裁判所に辞任届を提出したから前記原告両名より適法に訴訟委任を受けたものと認めることを得ないし、その後右原告両名は当裁判所の呼出に応じて期日に出頭し同代理人のなした訴訟行為を追認しなかつたから、弁護士赤松清亮が右原告両名の訴訟代理人として提起した訴は不適法として却下を免れない。
二、次に原告陳徳発の訴に対する被告渡辺輝一、渡辺武、多田隆一等の本案前の抗弁について判断することとしよう。
数人の共有者がその共有する不動産の処分につき訴訟を追行する場合は全員が共同して訴訟を追行するを要し一人或は一部の者よりする訴訟は不適法であるが、共有物に関する権利の主張は総ての場合権利者全員より出訴しなければならないといういわれはない。すなわち、賃借中の共有不動産につき賃貸借の合意解約或は無断転貸を理由とする賃貸借の解約を理由として該不動産の明渡を求める場合だとか、共有不動産の不法占拠を理由としてその明渡を求める場合はいずれも共有者はその管理行為として各自単独で或は数人共同して明渡の訴訟を提起することができるし、必ずしもその者に対する判決の効力が訴を提起しなかつた他の者に対し及ぶと解しなければならない理由はないから、既に一部の共有者より前記のような理由で明渡の訴訟が提訴されていても他の共有者より提起された同一の被告に対する同一の請求についての後訴は二重訴訟として不適法となるわけはない。よつてこの点の抗弁は採用の限りではない。
三、次に本案につき判断を進めることにしよう。
(一) 本件家屋につき原告等四名の為に昭和二三年五月一日付その所有権取得登記のあること、及び被告渡辺輝一、渡辺武が右家屋に居住していることは本件当事者間に争がなく(但し昭和二八年(ワ)第四九三号事件の被告呉啓三郎、石川宇三郎は本件口頭弁論の全趣旨によつても争う意思が明かに認められないから自白したものと看做される)、このことと、当裁判所が真正に成立したと認める甲第三号証、第二五乃至第三二号証、第六五乃至第六七号証、(昭和二八年(ワ)第四九三号の被告呉啓三郎、石川宇三郎と原告陳徳発間を除いた当事者間において右甲第二七乃至三二号証の官署作成部分及びその他の右各証の成立については争がない。)、当事者間において成立に争のない乙第六号証の一、二、証人福隆欽の証言及び原告陳徳発本人尋問の結果により真正に成立したと認める甲第一号証に、証人藤田義太郎、滝本邦夫、福隆欽、西川慶治の証言、原告陳徳発、被告渡辺輝一各本人尋問の結果を綜合すると、本件家屋は昭和二〇年一〇月三日より被告渡辺輝一が当時の所有者藤田義太郎より賃料一ケ月金一〇〇円、毎月末その月分支払の約で賃借し息子である被告渡辺武等家族と同居中であつたところ、家主の藤田義太郎は財産税支払の資金獲得の為本件家屋と西川慶治に賃貸中の同所同番地の東側の一戸を併せて売却する決意をなし、一応は各賃借人に買取方を進めたが、埒があかなかつたところより、かねてから懇意にしていた中国人福隆欽を介して昭和二三年四月末日頃原告陳文効、陳徳発及び現在は所在が判明しないが当時日本に居住していた中国人陳尚飛、陳尚華に売却し、よつて右四名がその所有権を取得し前記のようにその登記を了したことが認められるから、原告等四名は藤田義太郎より被告渡辺輝一に対する賃貸人としての地位を承継したわけである。右認定に反する甲第六六号証の記載の一部及び証人藤田義太郎の証言部分は当裁判所の信を置けないところであり、他に右認定に反する証拠はない。
(二) 原告陳文効、陳徳発は被告渡辺輝一との間に明渡の合意が成立した旨主張し、当裁判所が真正に成立したと認める甲四五号証、第七号証、第二四号証、第五九号証の一乃至三(昭和二八年(ワ)第四九三号事件の被告呉啓三郎、石川宇三郎と原告陳徳発間を除いた当事者間においては甲第七号証、第二四号証について官署作成部分のみ、その他の右証拠については全部その成立について争がない。)前記甲第六五及び第六七号証当事者間に成立に争のない乙第五号証の一及び証人福隆欽、原告陳徳発本人の各供述は右主張に符合しているが後記各証拠に照してみて当裁判所の信を置けないところであり却つて前記甲第四五号証、第七号証、第二四号証、第五九号証の一、第六六号証の各記載の他の一部、当事者間に争のない乙第五号証の二と証人滝本邦夫、西川慶治、藤田義太郎の証言、被告渡辺輝一本人尋問の結果を綜合すると、原告等四名が前記のように本件家屋を買受ける際昭和二三年四月中仲介人福隆欽は被告渡辺輝一方を訪ね原告等において本件家屋を買うことになつたから明渡して欲しい旨告げて右輝一の家族に交渉したことがあつたが満足な返事を得られなかつたのに、原告等はその居住家屋もなかつたし、敗戦後日も浅く治安の正常化していなかつた当時の世情よりして、外国人としての強い立場からする立退要求に対しては、結局被告渡辺輝一においてもこれに応ぜざるを得ないことになろうと事態を簡単に考えた結果、所有権取得登記をするや早速書面等で右被告に対して明渡の催告をなし、これがもとで同被告との間に警察沙汰まで引起し爾来たえず紛争を続けていることが推認され、他に右認定に反する証拠はない。
(三) そこで、原告等主張の転貸を理由とする解約の意思表示の当否について考えてみよう。
被告呉啓三郎、石川宇三郎、多田隆一、田中常三の四名が本件家屋に居住していたことは当事者間に争がない。(昭和二八年(ワ)第四九三号事件の被告呉啓三郎、石川宇三郎は本件口頭弁論の全趣旨に徴して明かに争う意思がないものと認められるから自白したものと看做される)。そうして、原告陳徳発は被告渡辺輝一に対して昭和二八年五月二三日、同年(ワ)第四九三号事件の訴の提起により原告等主張のように転貸を理由とする本件家屋の賃貸借の解約の意思表示をなし、右訴状は同年六月二五日被告渡辺輝一に送達され、同日同被告に右意思表示が到達したことは本件記録上明かである。
そこで、先づ共同賃貸人の一人である原告陳徳発が単独で被告渡辺輝一に対してなした解約の意思表示が適法であるかどうかというに、民法第五四四条第一項の規定は契約関係を既往に遡つて消滅することにより法律関係の錯雑化するのを防止することを目的とする規定であるから、遡及効を有する解除のみに適用があり、契約関係を単に将来に向つて消滅せしめる性質を有する解約には準用のないものと解するを相当とするから、陳徳発のなした前記解約の意思表示は適法なものといわねばならない。
そこで、進んで原告等主張の転貸の事実が存在したかどうかについて考えてみるに、当裁判所が真正に成立したと認める甲第一八号証、第一九号証の一、二、第二〇号証、第九九号証の一、二(昭和二八年(ワ)第四九三号事件の被告呉啓三郎、石川宇三郎と原告陳徳発間を除いた当事者間においては甲第九九号証の一、二を除いていずれも成立に争がない。)証人福隆欽、滝本邦夫、西川慶治の証言、被告渡辺輝一本人尋問の結果及び検証の結果を綜合すると、被告渡辺輝一は前記のように原告等より明渡の要求を受けるや、これが対抗策として、昭和二三年八月中頃本件家屋の二階を被告田中常三夫婦に、同二六年一二月二四日から同二七年九月二一日迄本件家屋二階四畳半と三畳の二室を被告多田隆一に、同二五年一一月頃から同二八年二月頃迄被告呉啓三郎夫婦に、階下の一部を同二五年一一月頃から同二八年四月頃迄被告石川宇三郎とその家族六名に対して本件家屋二階一〇畳の間をいずれも賃貸し、ほとんど本件家屋の二階全部と階下の一部を他人をして占有せしめたが、現在はいずれも他に転居して居住していない事実が推認される。右認定に反する被告渡辺輝一本人尋問の結果の一部は当裁判所は信用しないところであり、他に右認定に反するような証拠はないから、右のような被告渡辺輝一の行為はまさに民法第六一二条にいう転貸に該当するものといわねばならない。
尤も前記のように現在転借人がすべて他に転居していないという事実は被告渡辺輝一において遅まきながらその過誤を正したものとして有利な資料として無視はできない点であり、しかも外国人という強い立場からする前記のような不条理な明渡要求に対して、現下の酷しい借家事情の下においては、被告渡辺輝一においてこれが対策に日夜苦慮したであろうことも当裁判所の推測のつかないところではないが、右のような明渡要求に対する対抗策として何をしても宥恕されるというわけではなく、かかる場合においても借家人としては尽すべき諸義務の履行をゆるがせにすべきではないことは勿論、賃貸人の信頼を裏切ることなきよう細心の注意をなすべきであるのに、対抗策としてとはいいながら、明かに賃貸人の意思に反して前記のように相当長期間に亘り数家族に対し順次本件家屋の一部を転貸した事実は、どうみても善良な賃借人として取るべき行為ではないのみならず、賃貸人の期待した信頼を裏切ること大なるものといわねばならないから、前記のような事情だけでは被告のなした転貸の事実を雲消霧散せしめるよすがとはなし難い。そうだとすると前記原告陳徳発のなした転貸を理由とする解約は有効である。したがつて原告等四名と被告渡辺輝一との間の本件家屋の賃貸借は昭和二八年六月二五日限り解除となつたものであるから、被告渡辺輝一は同日限り本件家屋明渡義務を負担したものといわねばならないが被告渡辺武は右躍一の息子であつて輝一の占有の範囲内において本件家屋に居住するものであるから本件家屋について独立した占有を有しないと解すべきであるし、その他の被告等は前記認定のように現在本件家屋に居住していないから、被告渡辺輝一を除いた他の被告等に対する原告陳文効、陳徳発の明渡の請求はいずれも理由がないというべきである。
(四) 最後に延滞賃料並びに損害金の請求の当否について考えてみよう。
現下の一般物価に比して家賃の停止統制額は相当低廉である実情より推すと、賃貸借の当事者間には反対の事情のない限り停止統制額の最高額を以て賃料とする暗黙の合意が存在しているものと見るべきを相当とするから、本件家屋の昭和二七年一月一日当時における停止統制額は当裁判所が真正に成立したと認める甲第一〇〇号証の一、二(昭和二八年(ワ)第四九三号事件の被告呉啓三郎、石川宇三郎と原告陳徳発間を除いた当事者間において成立に争がない。)により算出すると一ケ月金一、〇六一円であること算数上明かであるから右額を以て当時の本件家屋の賃料と見るべきであり、本件口頭弁論の全趣旨によると被告渡辺輝一は昭和二六年二月以降の賃料の支払をしていないことが推認されるから、被告渡辺輝一は原告陳文効、陳徳発に対し昭和二七年一月一日以降賃貸借終了の日である同二八年六月二五日迄右賃料の範囲内である一ケ月金五四〇円の割合による延滞賃料並びに同二八年六月二六日より右家屋明渡済迄一ケ月右賃料相当額の割合による損害金の支払義務あるものというべきである。
よつて、原告陳尚飛、陳尚華の各訴を却下し、原告陳文効、陳徳発の被告渡辺輝一に対する本訴請求は全部正当としてこれを認容し、その余の被告等に対する請求は失当として棄却を免れない。
そこで、訴訟費用について、原告陳尚飛、陳尚華の訴について生じた分は本件記録によると原告陳文効が右両原告の所在が判明しないのにその代理人と称して弁護士赤松清亮に右両原告を本人として訴を提起せしめたものと推認できないわけでないから民事訴訟法第九九条を準用し、その他の分については民事訴訟法第八九条を適用し、仮執行の宣言につき同法第一九六条を適用し主文の通り判決する。
(裁判官 古川静夫 中島孝信 坂上弘)